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2005年09月04日

カメモに飛ぶことを教えた猫(著:ルイス セプルベダ  - 小説

命からがら重油の広がる海から脱出を果たしたカモメのケンガー。
彼女を助けようとする猫とした三つの約束。
その約束を守るためには、港の猫たちの力が必要で、みんなは快く助けてくれる。
個性豊かな猫達が、1羽のカモメとの誓いの為に、そして愛する小さなカモメの為に尽力します。

寓話の形で、色々なことを諭してくれる本でした。


面白くて、それでいてちょっぴり涙が出そうな感動を与えてくれる名著です。
1時間もあれば読めるので、機会があれば是非読んでください。

投稿者 tyoro : 06:12 | コメント (0)

2005年08月28日

西の魔女が死んだ(著:梨木香歩 - 小説

中学に進んで、学校へ足が向かなくなった少女まい。
両親の勧めで、ひと月あまりを田舎に住む祖母の元で過した。

これは少女と魔女のお話。(第44回小学館文学賞)

魔女といっても、杖や魔法が出てくるファンタジーの世界とは違う。

学校からエスケープしてきたまいは、自然の中の規則正しい生活の中で「自分で決めてやり通す」ことで、成長していく。
この「自分で決めてやり通す」という事は、魔女だけに許された事ではなく誰もが行える事。
だけど、なかなか実行できない事でもある。

大小様々な問題事に出会いながらの生活だけど、もっと真摯にその問題と向き合うべきだと考えさせられる一冊。

それでいて、田舎の生活の細かいディティールを感じる事ができる本でもある。
草木の匂い漂う森で、綺麗な空気を吸っているような気持ちにしてくれます。


成長したまいのその後の姿を描いた、「渡りの一日」も併録されてます。
「西の魔女が死んだ」とは一転して、少しコミカルな作りになっていますが、成長したまいの魔女らしさを見て取れて面白いです。

梨木さんの本をもっと読みたくなった。誰の本読んでも、同じこと言ってるけど。


誤解は人生を彩る。

投稿者 tyoro : 00:56 | コメント (0)

2005年08月15日

まどろむように君と(著:浅井ラボ - 小説

「されど罪人は竜と踊るⅦ まどろむように君と」を読了いたしますた。
やはり浅井ラボは自分が好きな作家五指に入る兵です。

今回は短編集。
・いつもどおり重い、雑誌掲載者3点
・爆笑ものだけどキレイに締める、書き下ろしのが1点
・敵側の外伝的な書下ろしが1点

バランスがとれてますねぇ

以下軽いネタバレあり

では話別に感想。

●序章
Ⅲ巻みたいな序章。
こーゆーあたりさわりが無いのよりも、もっとⅥ巻みたいな思わせぶりなのがいい。

ただ、ヴォックル競技のディティールがつかめるのは気になってた人間としてよかった。
地区分けとかチームの特色は野球っぽいけど、試合事態はサッカーだった模様。

●黄金と泥のほとり
収録1品目は胸糞悪い金品の悲劇。
伏線になりそうなキャラの設置もあるし、名前だけだったキャラが出てきたりもした。
元がありがちな悲劇だけど、この人の手にかかると複雑になって面白いね。
ただ単行本待ちの立場のせいで、読むのに間があるから、いまいち作品の主だったところに出てきてない組織関係を忘れてる。
相変らず情報量の多い小説だなぁと思わされた。
咒式の説目に関しては、すでに頭に叩き込まれてるから省いてくれてもいいくらいだけど。

●しあわせの後ろ姿
あとがきに「ざわ……ざわ……。六巻後、だと!?」となっていたとおり、6巻後(というより5巻後)って感じにジウのこと引きずってる話。
他の短編と比べて、一番続き感があった。
男女関係に関わる悲劇。これもまぁ昼ドラにありそうなネタが元だけど、材料はそうでもうまい料理になってる。
ガユスの狂言廻し具合が顕著。


●三本脚の椅子
椅子学と音楽にまつわる悲劇。
ちょうどデザイナーズチェアーを扱った番組を見てたので、椅子学って言葉に惹かれた。
出てきたのは「天才家具職人トールダムの七十七椅子の一脚『翼獅子四方脚座』」どんな椅子だろう。
まぁ、話の主題に椅子学は関係ないけど、親子をつなぐものとして出てくる。

今回の短編の中では比較的ライトな内容で、音楽に対する姿勢の話。
でも、結末はやっぱり悲劇。
逃れられません。


●優しく哀しいくちびる
一転して喜劇。かなり腹抱えて笑わせてもらった。

悲劇が連続したシリーズなのに、どうしてこんなに面白くキャラを立ち回らせることが出来るんだろうか。
一般的な叙事詩的なお話なら、逆立ちすれば考えることは可能だろうけど、こーゆーのは逆立ちしても無理です。

Ⅲ巻の黒ジウの登場あってこその話しだけど、ほんとにレベルが高い。
でもラストはキレイに締めました。


●翼の在り処
またまた一転して、ガユスやギギナから離れた外伝物。
作者に気に入れられてるのか、またメインはラキ家の二人のようだったけど、今回は他の翼将の各の違いを見せ付けられる。
ってか、とうとう翼将が全員わかったわけだけど、あいかわらず全部個性的だけど関係に破綻が無い。
異常な正義を振りかざすランドック人に始まって、10才~14才しか愛さない変態、生物滅亡希望の魔女。
比較的まともな上位の3人と末席の2人を除いても、7人の変人。それを統括する枢機卿長も変人。
よくコレだけ個性的なキャラだしまくってバランスとれるもんだなぁ。

キャラノ個性はともかく、それを生かしきっているかとなると、西尾維新より浅井ラボの方が上を行ってると思います。

ってことで話別感想おしまい。
次は長編が読みたいなぁ、Ⅵも短編集だったし。

あとオビで漫画化も報じてた。
この手の小説が主体にあるマンガとしては、安井健太郎のラグナロクとか水野 良のロードスとか良い例があるけど、コレに関してはどうだろう。

あの絵のクオリティは出せないし、話もある程度簡潔にすることを考えたら重い話はいっそバッサリ切り捨てて、喜劇メインで出して欲しい。
ラグナロクにおけることぶきつかさみたいな存在は、そうそう出てこれるもんでもなかろうし・・・。
(そもそもラグナロクは元絵がTASAさんだし。

まぁ、単行本待ちか・・・。けっこう楽しみ。


ってかこのページレベル高すぎ。あぁ、こんな設定とか作りてぇ。

投稿者 tyoro : 05:38 | コメント (0)

2005年07月24日

アンダカの怪造学Ⅰ ネームレス・フェニックス(日日日) - 小説

第8回角川学園小説大賞・優秀賞受賞作品。

作者の日日日(あきら)は、角川学園小説大賞・優秀賞以外に・・・
碧天舎第1回恋愛小説コンテスト・ラブストーリー大賞受賞、第4回新風舎文庫対象・大賞受賞、第6回エンタープレインえんため大賞・佳作受賞。
こんな新人見たことない。その上この4作品が書かれたのは全て17歳の時というから驚き。
期待は膨らむ一方ということで、このアンダカの怪造学を手にしてみました。
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金曜日の授業中に読み終えました。けっこうぶつ切りで読んでたので時間食ったかな。

結論から言うと、面白かった!
ただし、諸手を挙げて褒めるって程じゃないけど。

ある程度に深い設定ではあるようだけど、けっこう理解しやすい書き方をしてるし、解説もしつこくない。
キャラも個性十分で、ネーミングセンスもそれなりによし。
主人公の不幸・不運そして悪運なんかもよし。

だけど、なんつーか衝撃的ではなかった。
ストーリーは「主人公天才型」として、ある程度ありがちなところを走ってる、まぁこれは普通として。
キャラクターは個性的で言い回しや性格の悪さが光る。でも西尾維新と浅井ラボ足して2で割った感じ。
特に考えさせられる内容でもないし、残る内容でもなかった。(『友達』について書きたいわけじゃないよなぁ・・・
けど普通よりはおもしろかった。


そもそも、ストーリーの流れが「されど罪びとは竜と踊る」っぽさを感じさせるんだけど、あそこまで突き抜けてないのが物足りないし。
キャラの性格とか名前とかが西尾維新っぽかったりして。
(蟻馬磁獄に関しては、「されど~」のガユスっぽかった(´-`)
文章は誰っぽいってのは特に浮かばなかったけど、でも新しさもなかったし。

まぁ、継続して読みたい作家ではあるので、他の日日日作品も読んでみよう。
それで、日日日の方向せいがもっとしっかり見えるかもしれないしね。

日日日が受賞した各作品のジャンルは一つじゃなくて、ホラーに恋愛にファンタジーと多岐に渡ってる。
その中でも、やっぱり自分に馴染深いファンタジーから読んでみたのは失敗だったのかもしれない。
どれでも一緒だったかもしれない。

それはそうと、エナミカツミさんのイラストは秀逸でした。

投稿者 tyoro : 00:44 | コメント (0)

2005年07月12日

李陵・山月記ほか(中島敦) - 小説

「山月記」「名人伝」「弟子」「李陵」の4作からなる短編集を読み終えました。
特に「弟子」が良かったけど、全体的に良作です。

喘息により33歳で無くなった鬼才ですが、残された作品は未完も含めて20あまり。
しかも、うちせいぜい2編が中編小説、残りは短編。あまりにも少なすぎる。

・山月記
これは、高校の国語の教科書にもなってたので、知ってる人も多いはず。
猜疑心のあまり、虎の姿になってしまった詩家の話。
セツナイヨ。

・名人伝
最初は、弓を極めていく若者の話なんだなって感じだったけど、最後はなんか老荘の思想みたいになってきてた。
オモシロイヨ。

・弟子
孔子の弟子の中でも最年長の子路と、孔子との諸国の旅を描いた作品。
この本を読むまで、孔子の弟子なんて「顏淵」と「子貢」くらいしか知らなかったけど、熱い男も居たようだ。
ってか、儒家の思想って基本的に嫌いいなので、孔子自身けっこう嫌いだったんだけど、考えが変わったかな。
ナケルヨ。

・李陵
勇将李陵の、戦いと敗北、その後の捕虜としての思考を描いた中篇小説。
主人公は李陵で、その葛藤が多く描かれてるけど、意識に残ったのは史記の著者である「司馬遷」が描かれる項。
李陵、司馬遷の勇将・知将の中の弱さと、意地を貫き通した蘇武との対比がいいです。
オモイヨ。


で、これを読み終わった後、もう一つ持ち歩いてた日日日の「アンダカの怪造学」を読み始めたんだけど。
字でけぇ('A`) 文体が若い('A`) 古典ばっかよんでたからよみずれぇ('A`) なきそう('A`)

話は面白いので読むけど、数ページで既にしんどい。
でも50ページに2時間半かかる中島敦と違って、50ページなんて20分程度で読めるのがいいところ。

ちなみに、中島敦の作品は全部青空文庫で読めるっぽさ。

投稿者 tyoro : 03:10 | コメント (0)

2005年06月10日

幽霊たち(ポール・オースター) - 小説

読了しました。

オースターの本は、考えることを楽しませてくれる本だと思う。
その本によって、書かれている題材は違うんだけど、その題材について読者が考える手助けをしてくれる本を書く人だと思う。

この本「幽霊たち」は、自分について考えさせられる本だった。
結果ネガティブな考えに潰されそうなんだけど・・・


他のオースターの本ももっと読みたいなぁ。

投稿者 tyoro : 02:18 | コメント (0)

ネコソギラジカル (中) 赤き征裁VS.橙なる種(西尾維新) - 小説

読了しました。

金曜日の午前6時半。学校へ行くまであと2時間。
まぁ、行くかもわからないけどね。

(以下ネタバレ含む)

やはり西尾維新はやってくれます。
完膚なきまでに物語を終了させるつもりのようで。

最終的には伏線はりっぱなしで終って、外伝すら出さないとかありえそうだけど、とりあえず物語の謎が全て解かれることを祈ります。

あっけなく、人喰いが死に。
あっけなく、死神が死に。
あっけなく、人類最終が裏切り。
あっけなく、人間最悪が投了した。

小説を読むとき、先を予想しながら読む癖があるんだけど、こと戯言シリーズに関しては、予想したとおりの結末になってくれたためしがない。
でも、読んでみると、これ以外に道が無かったように思えるくらい完成してる。
そんな小説を読むのは、もちろん楽しい。


真心が、どこまでも普通だったり。
人類最強が負けたり。
崩子ちゃんが壊れたり、照れたり。
小唄さんが、結局いい感じに使われてたり。
ひかり(てるこ)さんが、いやに誘ってたり。
西東さんの人望が思いのほか低く、いい感じに澪標が独断行動をしたり。
十三階段の一員が、軍団のメンバーだったり。
本来ならヒロインキャラ的つくりの頭巾ちゃんが、適当にあしらわれた結果、伏線を回収せずに惨殺されたり。
玖渚が死にそうだったり。
絵本さんが、春日井さんに次いでツボを心得てたり。

ほんと、端から端まで、隙なく数奇で数寄な所が好きです。


伏線だらけで、気になることが山ほど。

哀川さんの、苗字の話。
頭巾ちゃんの、おじいさんの話。
子荻ちゃんに次ぐと言われる頭巾ちゃんの才能。
裏切り者認定された絵本さんの命運。
人識と出夢くんの過去の邂逅。
七々見の魔女性(というより正体)。
零崎一賊の滅亡。
零崎舞織が生きているのか。
闇口濡衣の主。と崩子との関係。
十三階段の立ち回りと、西東さんの位置。
集合してるクラスタの5人。
いーちゃんの名前。
井伊遥奈のこと。
未だに接点を書かれる、沙咲さんと数一さん。
名前の無い天才の次の名前。
ジグザグと零崎の出会い。
名前だけの登場人物たち。
らぶみさんとか。

でも、維新の作品は、伏線を放置するところに良さがあったりするので、もしかしたら回収されないのかもしれないな。

とりあえず明日は、ミスドに行けたらフレンチクルーラーを買おう。

投稿者 tyoro : 00:00 | コメント (0)

2005年05月24日

ねじまき鳥クロニクル 1~3巻(村上春樹) - 小説

読了しました、朝の5時。
授業があることよりも、本を優先するのは自分の悪い癖ですが、世の中には授業よりも優先すべき本が多数存在すると思います。

この本も、そんな本の一冊だったようで。

もともとは、ただの小説として、最後まで読めるか心配しながら読み始めた本だったけれど、その心配は必要がなかったようで、
一つの物語を読んでいる中に、因果関係を持った多くの物語があって、多くのことを語っていた本でした。
もしかしたら、一つのことを語っていた本なのかもしれないけど、そうだとしたら自分にはそれを単一の物としてまとめ込む能力が足りないようです。

夫婦の話、オカルティックな話、かつらの話、第二次世界大戦のノモンハン戦役とその周りのこと。

この本が人に与えるモノは、読み手の年齢や立場によって大きく違うと思うけど、自分が読んだ後に心に残ったものは、あまり希望に満ちたものではないようです。
もともと、自分の根底としてある考えは「なるようにしかならない」という考え方だったけれど、この本を読んで、「もっとひどいことにもなりえたのだ」という思考も加えるようになりました。

全3巻、あわせれば1184Pにもわたる大長編だったけど、非常に読みやすい文章と内容で、"読むこと"には時間の経過を苦としない本でした。
ただ、毎晩夜通し読んでいたわりに、8日間もかかった事を考えると、以外に時間がかかりました。
それは、"読むこと"以外に"考えること"に割く時間が割かし多い本だからかもしれません。


自分にとってこの本が、村上春樹デビューだったわけで、まだまだ村上さん作品は世の中に出回っているので、それを読むのが楽しみです。
さて、次に読まなければならない本は山積みだけど、とりあえず軽いところでバッカーノあたりから崩していこうかな。

投稿者 tyoro : 06:17 | コメント (0)

2005年05月14日

嘘つきは妹にしておく(清水マリコ) - 小説

toi8さんの絵に惹かれて買ったこの本、同時進行で3冊くらい読んでた所為で遅々として進んでなかったので、とりあえず読み終わろうと思ったらすぐに読めた。

感想としては、面白いけど特に残ることも無く・・・といったところか。

清水マリコさんの作品は初めて買いました。
読みやすい文章で、切り方も構成もうまいと思います。お話もうまいと思います。
だから面白かったです。・・・そんな感じです。
最後がけっこう「やられた」って感じでした。

話もさることながら、toi8さんの絵は素晴らしい限りで、この作品にこの挿絵がなかったら、この作品は作品として未完な気がするくらい。
実際、この本を最後まで楽しく読めるようにイメージできる根幹は、この絵にあると思うのですよ。


で、toi8さんが他に絵を描いてる作品として、もちろん清水マリコさんの続編も読みたいところだけど、押井守監督の「Avalon」の挿絵も描いてるということ知り、即座に注文した。
届くには届いたんだけど、外伝らしいので、元の映画を見てから読もうということで早くも封印されてしまいました。

で、他にtoi8関係のものはないかと検索していたところ、手元にあってファウストVol4で、原作有りで数ページのカラーマンガを載せていたことに気づきました。
そのマンガは読んでいたけど、toi8さんだとは全然気づかなかった。修行が足りない・・・

で、そのファウスト掲載の絵に衝撃を受けたって人が、挿絵をお願いした講談社ノベルスの小説が存在したようで、それが化野燐さんの「蠱猫」だったりします。
読みたいけど、あまり買う気は起きません。

それはそうと、amazonでもヒットしない画集が存在するようです。
で、欲しいなぁと思ったら同人誌だったようで、危険な領域に足を踏み入れてる気がしてなりません。
が欲しいです。

ここを虚空のリングで検索かけると、小さいですが表紙が見えます。l

投稿者 tyoro : 02:33 | コメント (0)

2005年04月25日

しあわせは仔猫のかたち & 未来予報 (乙一) - 小説

本を読んだ。
やることがいっぱいな状況では、逃避のようなものなんだけど、時間を潰す目的とかとも重なってたりする。

やることが山済みな時に、時間を潰すなんて、なんて贅沢なんだろう。

1冊、というか1作品目は「失踪HOLIDAY」という本に収録されている「しあわせは仔猫のかたち」。
これは60ページちょっとという短編で、もう読むのは6回目くらいなんだけど、何度読んでも切ねぇ。

友達があまり小説を読まないというので、手元の特殊な本ばかりの本棚から比較的まともだと思って棚から出したんだけど。
明日持っていくつもりなので、とりあえずパラッとめくってしまったのが運の尽きで、最後まで読んでしまった。
カメラを買ったけど、今のところ被写体が建築物だけなのが、少し寂しくなりました。


2冊、というか2作品目は「さみしさの周波数」という本に収録されている「未来予報」という作品。
これも60ページ程の短編で初読みだったんだけど、2年位前に友達に借りたまま駆りっぱなしの本です。
乙一の作品が読みたくなったので、出かけるのに持って行ったんだけど、1時間近く待たされる時間があったので、読み始めてみた。

切ねぇ。

この人の本は、切なさを感じずには居られない。
主人公が、自分とかぶってしまう。その、無力さ、若さ、浅はかさが。

社会の歯車になることを拒んだ結果、社会の歯車にすらなれない主人公。
最後には、前向きになるんだけど、救われてるとはいえないし。
あぁ 切ねぇ。

とりあえず、乙一いっぱい読もう。

投稿者 tyoro : 02:02 | コメント (0)

2005年04月22日

ドリルホール・イン・マイ・ブレイン(舞城王太郎) - 小説

昨晩、舞城王太郎の『ドリルホール・イン・マイ・ブレイン』を読み終えた。
雑誌に描かれた短編作品なので、100ページ程度しかない。
その割には読み終わるのに数日を要した理由は、一度に読みきれない程度に気持ち悪かったから。


でもまぁ、内容はおもしろかったので最後まで読んだ。
自分が佐藤友哉が好きなのは、適度に狂ってるからなんだけど、なんかこの辺みんな狂ってる気がしてきた。
そんなくらい内容は狂ってた。

世界の自分がいるという構造は当然として、その自分の中に別の世界がある。
その世界の中にもまた世界が存在するかどうか、その世界以外にも自分の中に世界が存在するかどうか、結果は語られないにせよ そういう話も出てくる。

でも、そんなことはこの作品を語る上で重要な項目にはならないし、そもそも語れるような内容が無いくらいにぶっとんでた。
ファウスト創刊号の巻頭に持ってくる作品としては、このくらいのパンチがいるのかもしれない。

でも、気持ち悪いからあまり読まない方がいいと人に言ってしまうような、そんな作品でした。

投稿者 tyoro : 02:07 | コメント (0)

2005年04月16日

クリスマス・テロル - 小説

授業中や移動中に読み進めていたこの本も、とうとう終ってしまった。

このblogに最初に書く書評というか本の感想が、クリスマス・テロルなのは、本の内容と照らしあわせれば面白いことかもしれない。

Christmas_terror.jpg

佐藤友哉。

この作家の本を手に取ったのは、ほんの気まぐれだった。
しかし、彼は私のような志向の嗜好を持つものにとっては、至高の逸材だ。

自分が読む、国外の作家ってのはそんなにいない。サリンジャー、オースター、フォークナー。そんなところ。
そして、佐藤友哉は『そんなところ』を突いて来る。

サリンジャーからの引用が好きで、さりげに引用してくるどころか、引用好きのキャラまで出してくるし。
そもそも、鏡家サーガシリーズそのものが、同じく狂った血族を描くサリンジャーの「グラース・サーガ」シリーズと繋がってる。もう鏡→グラースってくらい繋がってる。
オースターも、よく引っ張ってくる。
クリスマス・テロルなんかは「記憶の書」を読んでる人間が思わず笑ってしまう表現があふれていた。
『思い出せ!』『~~すること』ってフレーズがどこまでも印象的。

そして、今回もう一人名前が出た作家。
中島敦。この人の山月記という作品がめっぽうお気に入りな私としては、佐藤友哉とどこまでも嗜好が近い気がして、喜びのような感覚を得るとともに鬱な気持ちになった。
ちなみに、カフカやジョイスは積読状態で読んでないけど、この辺もひっぱってきてるらしい。
読んでみようかな。


3冊目までで、叙述トリックに飽きを感じはじめていたけど、この作品を読んでまた一つ上の段階に達したように思えた。
叙述どころではない、作者がしゃしゃりでてくる。
書くことの意味まで論じ始める、言い訳すら始める。そして愚痴る。
それが作品の内部にしっかりすっぽりはまってる。むしろ本質なんだろうか。

この絶望とも取れる問いかけの答えが、3年の間を置いて出された鏡家サーガの新作「飛ぶ教室」であるなら、こいつは早く読まないといけないな。

移動時間くらいしか読めないくせに、自転車移動だから遅々として進まないけどね。


カバー作品しか出さない作家は、いずれ忘れられるのかなぁ。

投稿者 tyoro : 03:03 | コメント (0)